2013年4月15日月曜日

古い会津鉋 重房二種


古い会津鉋 「重房」銘寸八(身幅約70mm)を手に入れました
銘振りからかなり古い重房と思われます

裏押しをやり直し

刃角度約27度に研ぎ上げました


研ぎ上げた刃先の状態
緻密に美しく仕上がっています
炭素鋼ですが、焼きがよく入っています
ここまで焼きが入っていて刃先が緻密に研ぎ上がるというのは
玉鋼ではあまり見られません・・
安来鋼はまだ無い時代なので
どのような鋼が使われたのか知りたいところであります

以前手に入れていた刻印銘の重房寸六と
削り比べを行いました


切り銘重房寸八の削り痕
深い逆目も完全に止まって、艶のある美しい削り肌です

こちらは刻印銘重房寸六
逆目は止まっていますが
やや肌が荒れています

動画撮影後の切り銘寸八の刃先
刃角度は約27度

ほとんど変化はありません

こちらは刻印銘寸六
刃先から1mmほどを刃角度約27度に研いでいます

画像では分かりにくいですが
こちらは刃先が摩耗しています
これくらいの削りで刃先が摩耗していては
仕事では使えません・・

動画では、身の収まりが緩すぎ
刃の出しと押え金の調整に苦労したので
台の押え溝を補修し、身が「きつく」収まるように
調整をやり直しました
裏金の差し込みもやや固くしました


これで削り肌に艶が出ました
身の収まり具合と押え金の圧力の影響が
削り肌にも及ぶということを再認識しました

刻印銘重房寸六はやはり焼きが甘すぎるので
焼き入れをやり直すことにしました

ついでに、同様に焼きが甘すぎる
重利銘二寸鉋身もやってみます

ということで、決行
焼き入れの動画は以前UPしておりますので

ただ今焼き戻し中
今回は約160で1時間の設定をしています

焼き戻し後、研ぎ上げてみましたが
どちらも鋼が薄かったため、焼き入れ後の歪み修正で
刃先中央部の鋼が無くなってしまいました

重利二寸
刃先中央部の楕円で囲んだところが
鋼が無くなったところ

鋼部分の刃先の状態は良かっただけに残念です

こちらは重房寸六
のところが鋼が無くなっています

こちらも鋼部分は強靭になっていました

4 件のコメント:

くわはら さんのコメント...

こんばんは。
かなりの頻度で焼き入れ、焼きなましをされていますが、その理由はどこにあるのでしょうか?

① グラインダーの使用でなまってしまうから?

② 刃全体に均一に焼きを入れるのが難しいので、使い減らすに従い焼きが甘い部分が出てくるから?

③ 製作者の熱処理が適正でない?

楽器製作家 田中清人 さんのコメント...

理由は一つで、自分の仕事で使いたいからです。
手に入れた古い鉋身は焼きが甘いものが多い
というのも理由かもしれませんが
それがどういう理由でそうなのかは
手に入れた状態では分かりません。
これまで焼きが甘い鉋はほとんど
焼き入れ・焼きなましをやり直すことで
仕事で使えるようになりましたが
今回のものは手に入れた時点で
鋼の厚みが薄すぎ、残念ながら
仕事で使えるまでには至りませんでした。

くわはら さんのコメント...

なるほど、ありがとうございました。

楽器製作家 田中清人 さんのコメント...

古い鉋身で焼きが入り過ぎていて
刃先が研ぎ上げた状態で、刃先が
ポロポロと欠けているものも
これまで数枚ありました。
これらは焼き戻しを行うだけで
よい状態に戻りました。